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医療保険を検討している人で、公的の健康保険の中身をあまり知らないという人はかなり多いと思います。

保険証を提示すれば医療費の7割を負担してくれることはほとんどの方が知っていると思いますが、健康保険には他にも私たちの万が一の時にとても役立ってくれる保障を備えているのです。

そのことを知れば、「医療保険はがんの保障だけを手厚くするだけで良いかも・・」と判断できたり、「もしかしたら余計な出費になってしまう医療保険に入る必要はないのでは?」という結論を下す人も少なくないと思います。

保険会社の営業員に高額医療費への不安を煽られ、本来なら自分には不必要かも知れなかった医療保険に入る前に、「最強の保険」と言われる日本の健康保険の中身を是非とも知っておきましょう。

健康保険は大まかに3つに分けることができる

まず、健康保険は大きく3つに分けることができます。3つということで「え?ちょっと読むの面倒かも」と思ってしまうかも知れませんが、出来るだけ分かりやすく解説を心掛けて書いていますので、良ければお付き合いいただければと思います。

ではまずはその3つを簡単に見てみたいと思います。

【健康保険】
サラリーマンやOLさんが入ることができるのが健康保険です。本人とその家族(被扶養者)が保障の対象となります。医療費の7割負担だけでなく、高額の医療費が掛かった時、出産した時、病気やケガで会社を休んだ時などの場合も保障してくれます。

【国民健康保険】
自営業者(個人事業主)、未就業者が入ることが出来るのが国民健康保険です。本人とその家族(被扶養者)が保障の対象となります。健康保険と違い、出産した時と病気やケガで仕事を休んだ時の2つの保障がないのが特徴です。それ以外はほぼ同じです。

【後期高齢者医療制度】
75歳以上の人が対象の公的制度で、75歳になると自動的にこちらへ移行され、医療費の9割が負担されるようになります。ただし、まだまだ稼いでいる人の場合は7割しか負担してくれません。

それでは、この3つについてもっと詳しく見ていきましょう。これまで中身を知らなかった人にとっては、見るだけでも発見があって楽しいと思いますよ!

健康保険の中身

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サラリーマンやOLさんなど、企業に社員として働いている人が対象の公的保険です。基本的には入社の段階で自動的に加入する仕組みになっています。保険料は給料から天引きされています。

この健康保険は

  1. 家族療養費
  2. 高額療養費
  3. 出産育児一時金
  4. 出産手当金
  5. 傷病手当金
  6. 埋葬料
  7. 公的介護保険(40歳以上から)

の7つを保障してくれます。

それでは、この6つについて一つずつ見てきましょう。

その.1 家族療養費

かかった医療費の7割を負担してくれます。そのため、私たちは本来支払うべき医療費の3割しか払わずに済みます。(※ 0歳~小学校入学前、そして70歳~75歳未満は2割負担です)

健康保険の中でも多くの人が知っているであろう保障ですが、逆に言うとこのくらいしか知らないという人も多いのではないでしょうか。

健康保険には他にも役立つ魅力的な保障がたくさんありますので、そちらも知っておくといざと言う時に役立つのは間違いないですよ。

その.2 高額療養費

入院や手術などで医療費が月間で一定額を超えた場合、払戻しが受けられる制度です。具体的には、一般的な経済状態の家庭であれば自己負担額は月に8万数千円くらいで済むようになります。

例えば月の医療費が100万円かかった場合、その3割の30万円が請求されることになりますが、高額療養費のおかげで8万7,430円の支払いで済んでしまうのです(計算式は下に載せています)。

また、1年以内に3回以上の高額療養費の給付があった場合、4回目以降は自己負担限度額がさらに引き下げられて月に44,400円で済むようになります。4ヵ月目からさらに安く済むようになるのは、経済的に非常にありがたいですね。

この高額療養費のおかげで手術+数ヶ月の入院であれば、ある程度の貯蓄があれば民間の医療保険に入らずとも十分に対処できるようになっているのです。

保険のスペシャリストであるFP(ファイナンシャル・プランナー)の中には「医療保険は必要ない!」と言っている方も多くいるのですが、それはこの高額療養費の存在がとても大きく、非常に役立つ制度だからなのです。ちなみに、もしも病気の時用の貯蓄が200万円くらいあるのであれば、医療保険は必要ないとも言われています。(数年単位の長期入院の場合だと話が変わってきますが、そのような病気になることは非常にまれです)

高額療養費の計算式は以下のようになっています。あまり難しくはありませんが、面倒であれば飛ばしてしまっても大丈夫です。とりあえず、一般家庭であればいくら手術や入院で医療費が掛かろうが、月に8万円~9万円を超えて請求されることはほとんどないということだけ分かっていればOKです。

所得 自己負担額
年収1,160万円以上 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収770万円~1,160万円未満 167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収370万円~770万円未満 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
年収370万円未満 57,600円
低所得者 35,400円
【年収600万円、月の医療費が100万円かかった場合の計算式】

  • 病院に支払う医療費:100万円×3割=30万円
  • 実際の自己負担額:80,100円+(1,000,000円-267,000円)×1%=8万7,430円
  • 結果として21万2,570円が返ってくることに!!
その.3 出産育児一時金

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健康保険に加入している本人、またはその妻(被扶養者)が出産した時、子供一人につき42万円が支給されます。

※ 産科医療補償制度の対象外となる病院での出産は40.4万円の支給となります。

その.4 出産手当金

出産のために会社員(被保険者)が仕事を休んだ場合、休んだ日数分の金額が支給される制度です。標準報酬日額の3分の2が支払われます。

【条件】

  • 1日につき、標準報酬日額の3分の2
  • 出産前の42日間から、出産後の56日間までの範囲内
その.5 傷病手当金

会社員(被保険者)が業務外の病気やケガの療養のために会社を継続して休んだ場合、4日目の休みから最長1年6ヶ月を上限に支給される制度です。

【条件】

  • 1日の支給額は、標準報酬日額の3分の2
  • 仕事を休んだ日から4日目以降に支給される(4日目が支給開始日)
  • 支給開始日から最長で1年6ヶ月まで支給される
  • 土日・祝日等の休日も支給対象となる

給与の約3分の2程度の給付となりますが、1年6ヶ月間も支給されるのは非常にありがたいです。かなりの長期入院にも対応できるということですので、会社員の場合は医療保険の必要性はかなり低いということが分かります。

ちなみに、業務上や通勤途上のケガや病気に関しては労災保険により給付されます。会社員の特権ですね。

労災保険についてはこちらのページで詳しく解説しています。
労災保険とは?簡単に理解するための5つのポイント+おまけ情報

その.6 埋葬料・家族埋葬料

会社員(被保険者)が亡くなった場合、埋葬を行った家族に対して5万円が支給されます。

また、家族(被扶養者)が亡くなった場合、被保険者に5万円が支給されます。

その.7 公的介護保険

40歳を過ぎると自動的に加入することになっている制度です。保険料は健康保険に上乗せする形で徴収されます。65歳以上の人は年金から天引きされるか、納付書での納付となります。

介護や支援のサービスを受けた時の自己負担額が1割で済むようになるので非常にありがたいのですが、介護状態の度合いによって利用できる限度額が変わってくるという一面も持っています

公的介護保険についてはこちらのページで詳しく解説しています。
公的介護保険制度とは?簡単に理解するための5つのポイント

国民健康保険の中身

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お次は自営業者(個人事業主)などが対象となっている国民健康保険の解説です。

保険料は口座振替、納付書によるコンビニ等での支払いとなります。

この国民健康保険は会社員が入れる健康保険とは異なる部分があります。それは「出産手当金」と「傷病手当金」の2つが付いていないということです。

具体的には以下の5つの保障で構成されています。

  1. 家族療養費
  2. 高額療養費
  3. 出産育児一時金
  4. 埋葬料
  5. 公的介護保険(40歳以上から)

これらの共通する5つの保障については健康保険とほぼ同じ内容となっているので、詳しくは健康保険の項目を見ていただければと思います。

傷病手当金がないため、自営業の方は会社員よりも医療保険の必要性が高い

先程も言いましたが、国民健康保険の場合は「出産手当金」と「傷病手当金」の2つが付いていません。特に傷病手当金が付いていないのが厄介で、病気やケガで何日仕事を休もうが手当は一切ないという状況なのです。これはかなり痛いですよね。

パソコンさえあれば仕事ができるという人であれば(例え入院中であっても)大きな問題にはならないかも知れませんが、体が資本の仕事をしている人の場合は休めば休むだけ収入が減ることになります。

そして入院ということになれば出費ばかりがかさむことになりますが、その分の手当は全くないため、かなり厳しい状況に陥る可能性があります。

そのため、自営業者の場合は会社員に比べると医療保険の必要性がかなり高くなるのが現状です。もちろん国民健康保険でも高額療養費は健在ですが、もしも貯蓄があまりなく、数ヶ月の入院でも経済的に困ってしまうという状況の場合は、月々2,000円くらいで加入できる安い医療保険(共済など)に入っておくことを検討しておいた方が良いでしょう。

入院すると仕事が全くできなくなる方などは、何らかの医療保険(または共済)に入っておくと安心と言えます。

個人事業主は一部の人しか労災を利用できない

また、健康保険・国民健康保険は共に「業務外の病気・ケガの場合」に保障されるものであり、仕事中や通勤途中の病気・ケガに関しては保障されません。

仕事中の保障に関しては、おそらく皆さん知っているであろう労災(労働者災害補償保険)によって保障されます。会社員の方は会社が労災の保険料の支払ってくれています。

個人事業主には一部の人にしか公的な労災が用意されていません。具体的には、一人親方や個人タクシー業者等の方は任意で加入できる「特別加入制度」を利用することができます。(詳しくは労災保険への特別加入 |厚生労働省のページへどうぞ)

それ以外の個人事業主は基本的に加入することができませんので、どうしても加入したい場合は民間または財団法人などが運営する労災に加入するという方法もあります。

後期高齢者医療制度

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最後の解説となりましたが、75歳以上の人、または65歳以上75歳未満の一定の障害者が対象となるのが「後期高齢者医療制度」です。

75歳の誕生日を迎えると、健康保険や国民健康保険から自動的に後期高齢者医療制度へと移行されます。何らかの手続きは必要ありません。

後期高齢者医療制度は健康保険や国民健康保険と比べ、医療費の自己負担額がさらに低くなります。具体的には、自己負担額は医療費の1割となり、高額療養費もさらに優遇されるようになります。

【後期高齢者医療制度の自己負担限度額表】

区分 自己負担 外来
(個人単位)
入院+外来
(世帯単位)
現役並み所得者 3割 44,400円 80,100円+(医療費-267,000円)×1%
一般 1割 12,000円 44,400円
低所得者Ⅱ
(区分Ⅱ)
8,000円 24,600円
低所得者Ⅰ
(区分Ⅰ)
8,000円 15,000円

医療費の負担が基本的に1割で済むようになり、高額療養費による一ヶ月の支払限度額が若い時よりもさらに低くなったのが嬉しいポイントです。

そのため、貯蓄がある程度あるのであれば、よほどの長期入院でもしない限りは民間の医療保険に頼る必要性はかなり少ないと言えます。

まとめ

健康保険、国民健康保険、そして後期高齢者医療制度の解説はいかがでしたでしょうか?

75歳までは健康保険、国民健康保険に強制的に加入することになりますが、その中身はかなり頼りになるものだったと感じられたのではないでしょうか。国民健康保険はちょっと頼りないところもあったかも知れませんが・・(^_^;)

そして、75歳になって後期高齢者医療制度に移行した後はさらに医療費の自己負担が減ることになります。

これまで解説してきた公的な健康保険の中身を知ることで、貯蓄がない時以外は民間の医療保険に頼る必要性はかなり低いと感じられた方もいるのではないでしょうか。それはまさにその通りで、私もそう思っていることです。

ちょっと保険のうんちくを語りますが、保険というものはほとんどの人が損をするものであるものの、運悪く万が一の事があった人の大きな助けになるというのが本質なのです。定期死亡保険や収入保障保険がまさにそれに該当します。

本当に困った人に、皆で集めたお金を出して「お互いに助け合う」のが保険なのです。

対して民間の医療保険を検討する際は公的な健康保険も考慮して検討する必要があり、しかも公的な健康保険の中身が非常に優秀な事から、ありがたいことに民間の医療保険に入っていなくても本当に困るという場面がとても少なくなっているのです。

しかも入院や通院などは死亡・高度障害と比べると頻繁に起こるため、どうしても保険会社が出してくれる入院一回の保障額も少なくなってしまうのです。

するかどうか分からない入院や手術のために、そして入院したとしても数万円~数十万円しか貰えない保険のために、月々の保険料を払ってまで加入する必要があるのでしょうか?

確かに「1回の入院にも困る」ようなあまりにも貯蓄がない状態なら、安くても良いから何らかの医療保険(共済など)に加入しておいた方が確かに良いです。そこは否定しません。ですが、ある程度貯蓄がある方は余計な保険料を支払って医療保険に入るよりも、その保険料の分を貯めておいた方が良いと個人的には思います。

ただし、自営業の方が加入する国民健康保険には「出産手当金」と「傷病手当金」が付いていないため、サラリーマンの方よりは医療保険の必要性は高くなります。入院すると仕事が全くできなくなってしまうという方は、医療保険を検討しておくのも良いでしょう。

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