繰り上げ請求をする方は毎年かなりの数(30%以上)に及びます。ただし、早い時期から年金が貰える反面、年金が減額されてしまったり、障害年金や遺族年金が受け取れないなど、見逃すことのできない大きなデメリットもあります。

そのため、繰り上げ受給する際はそれらを知ったうえで請求することをお勧めします。

このページでは繰り上げ受給の詳細とメリット・デメリット、加給年金との関係などを解説していますので、これから請求を検討している方は良ければチェックしていってください。

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60歳からの生活が経済的にとても困ってしまう場合はかなり役に立つ制度となりますが、そうでない場合は年金の繰り上げ請求の制度は基本的に利用しないほうがいいかと思われます。

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このページの内容

このページでは、以下の順番で情報を載せています。

  1. 繰り上げ受給とは
    • 老齢基礎年金を繰り上げる場合、老齢厚生年金も同時に繰り上がる
    • 繰り上げた場合、加給年金と振替加算はどうなるの?
  2. 繰り上げ受給のメリット
  3. 繰り上げ受給のデメリット
    • 繰り上げ受給をすると、その後は減額された年金を受給する
    • 平均寿命まで生きた場合、繰り上げしない人よりも年金の累計額が少なくなる
    • 国民年金に任意加入中の場合は利用できない
    • 一度請求すると、取り消しや変更はできない
    • 障害年金が支給されない場合がある
    • 寡婦年金が支給されない
    • 65歳になるまで遺族厚生年金との併給はできない

それでは、いきます。

繰り上げ受給とは

老齢基礎年金は原則として65歳から受け取ることができるのは多くの方が知っていると思いますが、実は支給年齢を早めることもできるのはご存知でしょうか。

具体的には60歳~64歳までの間でも年金の受け取りを開始することができます。これを年金の繰り上げ受給といい、通常65歳から貰える年金を60歳以降の希望の時期から受け取れるように請求することができるのです。

ただし、何のリスクもなしに繰り上げられるわけではありません。「0.5%×繰り上げた月数」が減額され、その後は一生ずっと減額された年金を受給するといった注意点があります。

ここで重要なことに気が付く方もいるかと思います。そう、長生きすれば繰り上げしなかった人よりも結局もらえる年金額は少なくなるという点です。

このように、繰り上げ受給にはメリットだけではなく、考慮すべき重大なデメリットもありますので、それらの点をしっかりと把握した上で利用するかどうかを決めるのが大切かと思います。

老齢基礎年金を繰り上げる場合、老齢厚生年金も同時に繰り上がる

厚生年金に加入していた方は、老齢基礎年金の支給繰り上げを行った場合、老齢厚生年金も同時に繰り上げが行われることになります。

また、ちょっと難しくなるのですが、「特別支給の老齢厚生年金」の制度によって60歳~64歳までの間で年金が受け取れることになっている場合でも、支給開始年齢に達する前に老齢厚生年金の繰り上げ受給をすることができます(60歳以降)。

例えば62歳から特別支給の老齢厚生年金が支給されることになっている場合でも、60歳からの支給に繰り上げることが可能となっているのです。ただし、繰り上げた分だけ本来の年金額から所定の割合(1ヶ月繰り上げるごとに0.5%)を減じられた金額が支給されることになります。

繰り上げた場合、加給年金と振替加算はどうなるの?

夫が20年以上厚生年金に加入していた場合、夫が65歳になった時点(正確には定額部分支給開始年齢になってからですが、これはちょっと難しいので・・)で、妻に加給年金が支払われます。

そして妻が65歳になった時点で、加給年金は振替加算と名前を変え、支払われることになります。なので妻の方が年上の場合は加給年金はなく、いきなり振替加算を受け取ることになります。

で、もしも妻が繰り上げ請求をする場合は加給年金はどうなるのか?というと、通常と変わらず夫が65歳になったら支払われることになります。妻が繰り上げ受給をしようが、加給年金や振替加算の支給については何も変わらないということになるのですね。

※ ただし、妻が厚生年金に20年以上加入していた場合はそもそも加給年金が支給されません。

繰り上げ受給のメリット

繰り上げ受給のメリットは以下の1点に尽きます。

  • 65歳になる前に年金を受け取ることができる

もし60歳で仕事を辞め、再就職の予定もなく年金生活に入る場合、65歳までは何の収入もなく過ごさないといけません(特別支給の老齢厚生年金がある方は別ですが)。

そうなると貯金が必要になるわけですが、もしも十分な貯金がない場合は生活がかなり困難なものになってしまいます。そのような場合に繰り上げ受給をすれば60歳からでも年金を貰うことができるので、経済面で非常に役立ってくれます。

このように、60歳からの生活が経済的にとても困ってしまう場合はかなり役に立つ制度となりますが、そうでない場合はこの制度は利用しないほうがいいかもしれません。

というのも、繰り上げ受給をすると結局は年金の累計額が少なくなる可能性があるなどのデメリットがあるため、65歳までは経済的に問題ない方にとってはあまりお得にならない可能性が高いのです。

以下、繰り上げ受給のデメリット部分を解説していますので、請求しようかどうか迷っている方は是非ともチェックしておいてください。

繰り上げ受給のデメリット

繰り上げ受給にはいくつかのデメリットがあります。利用を検討する際は次の点に注意するようにしてください。

  1. 繰り上げ受給をすると、その後は減額された年金を受給する
  2. 平均寿命まで生きた場合、繰り上げしない人よりも年金の累計額が少なくなる
  3. 国民年金に任意加入中の場合は利用できない
  4. 一度請求すると、取り消しや変更はできない
  5. 障害年金が支給されない場合がある
  6. 寡婦年金が支給されない
  7. 65歳になるまで遺族厚生年金との併給はできない

ではでは、それぞれの詳しい解説に移りたいと思います。

繰り上げ受給をすると、その後は減額された年金を受給する

繰り上げ受給は一見するとありがたい制度に見えますが、繰り上げた分だけ年金額が減額されるという注意点があります。しかも一時的にではなく、一生減額された年金を受け取ることになります。

具体的には「0.5%×繰り上げた月数」が減額され、その後は一生ずっと減額された年金額で受給することになります。つまり、60歳からの受給にした場合、減額される率は0.5%×12ヶ月×5年=30%となり、65歳から貰えるはずだった年金額の70%しか受け取れなくなってしまうのです。

年金額がずっと70%になってしまうのは痛いですよね・・。

平均寿命まで生きた場合、繰り上げしない人よりも年金の累計額が少なくなる

先ほどの続きになりますが、貰える年金額が減少するということは、長生きした場合はどこかの時点で繰り上げしない人よりも貰った年金の累計額が少なくなるという悲しい現象が起きてしまいます。

繰り上げしない人にどの時点で抜かれるかについては、以下の表をご覧ください。

支給開始年齢繰り上げしない人に
累計額で抜かれる年齢
60歳76歳
61歳77歳
62歳78歳
63歳79歳
64歳80歳

繰り上げ受給で60歳から年金をもらうようにした場合は、76歳になると繰り上げ受給しなかった人に累計額で抜かれてしまいます。64歳からの受給にした場合でも80歳で抜かれるという計算になっています。

日本人の平均寿命は年々長くなっており、今では男性でも80歳を超えるようになっています。ということは、別に長生きをするしないに関係なく、平均寿命まで生きることを想定した場合は繰り上げ受給をすると損になるということになりますね。

また、今後はさらに平均寿命が延びるだろうと予想されていますので、繰り上げ受給をすると損になる可能性がより一層高くなります。

そのため、「繰り上げ受給しないと65歳まで生活していけない!」という方以外は、基本的に繰り上げ受給すべきではないということになります。

国民年金に任意加入中の場合は利用できない

もしも国民年金に任意加入中の場合は、繰り上げ請求はできません。また、繰り上げ請求後に任意加入することもできません。

そのため、もしも繰り上げ請求をする場合は、保険料の追納を先にしておくといいでしょう。任意加入についてはこちらのページで詳しく解説してます。
国民年金の任意加入制度は利用すべき?貯金するよりも2倍以上お得になるので迷わず活用しよう

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国民年金の任意加入制度を簡単に言うと、国民年金保険料を支払っていない期間がある場合、60歳以降でも国民年金に加入できる制度のことです。

一度請求すると、取り消しや変更はできない

繰り上げ受給を請求した場合、基本的に請求の取り消しや変更はできない決まりになっています。

そのため、減額されてもいいから一刻も早く受け取りたいという場合を除き、じっくりと考えてから決める必要があります。年金がなくても何とか生活ができる場合はできるだけ利用しないのがベストかと思います。

障害年金が支給されない場合がある

繰り上げ請求をした後に初診日がある場合は障害年金を請求できなくなります。

ただし、障害認定日が繰り上げ請求前の場合は請求可能になるなど、場合によっては障害年金をもらえることもあります。どのパターンでもらえるのかは市区町村の役場、もしくはお近くの年金事務所などで確認できますので、詳しくはそちらの方でお願いします。

また、繰り上げ後の老齢基礎年金と障害基礎年金は併給はできず、どちらか一方を選択することになります。

寡婦年金が支給されない

繰り上げ受給をする場合、寡婦年金の請求ができなくなります。

また、寡婦年金の受給権者が老齢基礎年金の繰り上げ請求をする場合も、寡婦年金を受け取る権利がなくなってしまうことに注意してください。

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寡婦年金を簡単に言うと、国民年金の加入者である夫が死亡したときに妻に対して支払われる年金のことです。

65歳になるまで遺族厚生年金との併給はできない

老齢基礎年金の繰り上げ請求後に遺族厚生年金の受給権が生じた場合、65歳になるまでどちらか一方しか受給できないことになっています。

大体は遺族年金の方が貰える金額が大きいため、遺族年金を選ぶことになりますが、その場合も減額した老齢基礎年金のままで停止解除後も支給されるため、タイミングによっては繰り上げ請求をした意味がないどころか損になることもあります。

遺族厚生年金の受給権が生じるタイミングは自分では選べないので、こればかりはしょうがないところではあるのですが、繰り上げ請求をしなければよかった・・と後悔する人がいても無理はないといえますね。

この記事を書いた人

taka
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当サイト「takaの保険節約術」運営者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。骨折&手術で身をもって保険の大切さを知って以降、独学で身に付けた保険の知識を紹介するようになりました。FPから紹介された保険の見直しもやってます。保険だけでなく安定度の高い資産運用方法を常に模索していますので、興味がある方はLINEの方でご質問を。ラーメン、焼肉、テニス好き。

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