地震で家が被害を受けた時に保険金が出る地震保険。保険金は火災保険の半分までしか出ないし、かといって保険料が安い訳でもないし…、実際のところ本当に必要なの?皆どうしているの?と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
このページでは過去の地震の被害や保険金の支払い状況、加入率、これからの地震のリスクなど、地震保険にまつわる現状、必要性について説明しています。
これから地震保険の加入を検討している方、現在加入しているけれど更新しようか悩んでいる方は是非チェックしてみてください。
このページの中身
■目次
それでは、いきます。
過去の地震の被害はどれくらい?
まずは、これまでに発生した地震でどのくらい被害が出たのかを見てみましょう。被害が大きかった順に並べています。
【これまでの地震の被害】
地震名等 | 発生日 | マグニ チュード | 人的被害 | 物的(住宅)被害 | 被害総額 |
---|---|---|---|---|---|
平成23年 東北地方太平洋沖地震 (他一連の地震を含む) | 2011/3/11 | 9.0 | 死者19,575人 不明者2,577人 負傷者6,230人 | 全壊121,776棟 半壊280,326棟 一部損744,269棟 | 約17兆円 |
平成7年 兵庫県南部地震 | 1995/1/17 | 7.3 | 死者3,464人 不明者3人 負傷者43,792人 | 全壊104,906棟 半壊144,274棟 一部損390,506棟 | 約10兆円 |
平成28年 熊本地震 | 2016/4/14 | 7.3 | 死者258人 負傷者2,796人 | 全壊8,667棟 半壊34,643棟 一部損162,460棟 | 約2.4 ~4.6兆円 |
平成16年 新潟県中越地震 | 2004/10/23 | 6.8 | 死者68人 負傷者4,805人 | 全壊3,175棟 半壊13,810棟 | 約3兆円 |
平成19年 新潟県中越沖地震 | 2007/7/16 | 6.8 | 死者15人 負傷者2,346人 | 全壊1,331棟 半壊5,710棟 一部損37,633棟 | 約1.5兆円 |
平成20年 岩手・宮城内陸地震 | 2008/6/14 | 7.2 | 死者17人 不明者6人 負傷者426人 | 全壊30棟 半壊146棟 | 約1.5兆円 |
福岡県西方沖を 震源とする地震 | 2005/3/20 | 7.0 | 死者1人 負傷者1,204人 | 全壊144棟 半壊353棟 | 約0.5兆円 |
※参照:日本付近で発生した主な地震被害
やはり一番大きな被害が出たのは、2011年の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)でした。
家の被害は全壊から一部損までを含めると、約115万棟にのぼります。被害は地震の規模に比例して大きくなっており、兵庫県南部地震(阪神淡路大震災)で約64万棟、熊本地震で約20万棟になります。
いくら支払われた?地震保険の支払い状況
では実際、地震保険からどのくらい保険金が支払われたのかを見てみましょう。
【これまでの地震保険の支払い状況】
地震名等 | 発生日 | マグニ チュード | 支払い契約 件数(件) | 支払再保険金 (億円) | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 平成23年東北地方太平洋沖地震 * | 2011/3/11 | 9.0 | 807,152 | 12,749 |
2 | 平成28年熊本地震 | 2016/4/14 | 7.3 | 200,029 | 3,753 |
3 | 平成7年兵庫県南部地震 | 1995/1/17 | 7.3 | 65,427 | 783 |
4 | 宮城県沖を震源とする地震 * | 2011/4/7 | 7.2 | 31,055 | 324 |
5 | 福岡県西方沖を震源とする地震 | 2005/3/20 | 7.0 | 22,066 | 170 |
6 | 平成13年芸予地震 | 2001/3/24 | 6.7 | 24,452 | 169 |
7 | 平成16年新潟県中越地震 | 2004/10/23 | 6.8 | 12,608 | 149 |
8 | 平成19年新潟県中越沖地震 | 2007/7/16 | 6.8 | 7,869 | 82 |
9 | 福岡県西方沖を震源とする地震 | 2005/4/20 | 5.8 | 11,337 | 64 |
10 | 平成15年十勝沖地震 | 2003/9/26 | 8.0 | 10,553 | 60 |
11 | 平成20年岩手・宮城内陸地震 | 2008/6/14 | 7.2 | 8,276 | 55 |
12 | 駿河湾を震源とする地震 | 2009/8/11 | 6.5 | 9,518 | 52 |
13 | 静岡県東部を震源とする地震 * | 2011/3/15 | 6.4 | 5,354 | 46 |
14 | 鳥取県中部を震源とする地震 | 2016/10/21 | 6.6 | 5,538 | 46 |
15 | 岩手県沿岸北部を震源とする地震 | 2008/7/24 | 6.8 | 7,756 | 40 |
16 | 福島県浜通りを震源とする地震 * | 2011/4/11 | 7.0 | 2,373 | 37 |
17 | 長野県中部を震源とする地震 | 2011/6/30 | 5.4 | 2,982 | 33 |
18 | 平成12年鳥取県西部地震 | 2000/10/6 | 7.3 | 4,079 | 29 |
19 | 平成19年能登半島地震 | 2007/3/25 | 6.9 | 3,307 | 27 |
20 | 淡路島付近を震源とする地震 | 2013/4/43 | 6.3 | 2,942 | 23 |
※参照:地震再保険金支払状況|日本地震再保険株式会社(2017年3月31日時点)
※支払い保険金は千万単位で四捨五入を行い算出。
*東日本大震災に係る支払保険金は、3/11東北太平洋沖地震、3/15静岡県東部を震源とする地震、4/7宮城県沖を震源とする地震、4/11福島県浜通りを震源とする地震などを合計した約1兆3,113億円。
やはりこちらも支払い保険金がダントツで多いのは、2011年の東日本大震災です。
支払い保険金12,749億円、支払い契約件数807,152件なので、1件当たり平均で約158万円の支払いがあったことになります。熊本地震の場合は1件当たり平均で約187万円になります。
もちろん被害程度はお家によって様々なので、個別に見ていくと金額に開きはあります。
支払い保険金の上限
地震の際に支払われる保険金の総額には実は上限があり、その額は11兆3000億円となっています(2017年10月現在)。
この金額は、もし関東大震災級の地震が起きても保険金の支払いに問題がないレベルとされています。ちなみにこれまでで支払い総額が最大だったのは東日本大震災で約1兆3000万円です。
その次に多かったのが熊本地震で約3700億円、次いで阪神大震災の783億円です。ですので、まだこの上限を越えたことはありません。
もしこの金額を超えるほど地震保険金の請求があった場合には、本来支払うべき保険金総額に対する総支払限度額の割合を計算して、その割合に応じて1件当たりの地震保険金を減らす可能性があります。
みんな入っているの?地震保険の加入率
そうは言っても地震なんて起こるか分からないし、みんな入っているの?と感じている方もいらっしゃると思います。
全国でどのくらいの人が地震保険に入っているか、加入率を見てみましょう。
【全国 年度別 地震保険加入率】
年度(年) | 加入率 |
2006 | 20.8% |
2007 | 21.4% |
2008 | 22.4% |
2009 | 23.0% |
2010 | 23.7% |
2011 | 26.0% |
2012 | 27.1% |
2013 | 27.9% |
2014 | 28.8% |
2015 | 29.5% |
2016 | 30.5% |
※参照:グラフで見る!地震保険統計速報|損害保険料率算出機構
※各年度12月末の地震保険契約件数を、当該年度1月1日時点の住民基本台帳に基づく世帯数で割って算出。
上の表は全国で地震保険に加入している世帯の割合です。2011年の東日本大震災を機にやや増えましたが、それでも全国まだ3割と低い状態です。やはり知名度がそれほど高くないことや、保険料の高さ、補償金額が火災保険の半分であることが理由として挙げられます。
地域別に見てみると、加入率が高いのはトップから順に宮城県(51.8%)、愛知県(40.3%)、東京都(36.7%)。逆に低いのは沖縄県(14.8%)、長崎県(15.4%)、島根県(16.2%)です。大地震が起こった地域やこれから起こる可能性が高い地域は加入率が高く、そうでない地域は低い傾向にあります。
また、火災保険の契約件数のうち、地震保険をつけている契約の割合は全国で62.1%(2016年度)となっています。こちらも宮城県(86.4%)や高知県(84.8%)など過去に大地震が起こった地域やこれから起こる可能性が高い地域は付帯率が高く、長崎県(45.0%)や北海道(52.4%)などそうでない地域は低くなっています。
※地域別加入率、地震保険付帯率、いずれも損害保険料算出機構より(2016年度)
これからの地震のリスク【発生地と発生確率】
ではいったい地震はいつどこで起こるのか…、100%の予測は難しいですが、リスクの高さを知ることで地震保険はじめ地震への備え全般をよりしっかり行うことができると思います。
政府の地震調査研究推進本部という特別機関が、2018年1月1日時点での全国の地震発生確率を発表しています。この機関は、地震の調査研究の成果を国や自治体の防災対策にきちんと結びつけるのを目的として、平成7年の阪神・淡路大震災を機に設立されました。
地震発生確率は、「同じ場所で同じような地震が定期的に起こる」という仮定の元、歴史研究や調査研究で得られたデータを使って計算されています。このデータは毎年更新されています。
【マグニチュード8以上が予想される大型地震のうち、発生確率が特に高い地震】
領域または地震名 | 予想マグニ チュード | 10年以内の 地震発生確率 | 30年以内の 地震発生確率 | 50年以内の 地震発生確率 | 平均発生間隔(上段) 最新発生時期(下段) |
---|---|---|---|---|---|
南海トラフ | M8~M9 | 30%程度 | 70%~80% | 90%以上 | 88.2年 72.0年前 |
根室沖 | M7.8~M8.5 | 20%程度 | 80%程度 | 90%以上 | 65.1年 44.5年前 |
十勝沖から択捉島沖の 海溝寄りのプレート間地震 | M8.0程度 | 20%程度 | 50%程度 | 70%程度 | 39.0年 -(データなし) |
三陸沖北部 | M8.0前後 | ほぼ0%~2% | 4%~20% | 60%程度 | 約97.0年 49.6年前 |
※地震調査研究推進本部 地震調査委員会「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2018年2月9日)」参照
南海トラフ地震はおおよそ88年周期で発生しており、前回の発生から2018年時点で72年経っているので近いうちに発生する可能性が高く、30年以内に70~80%の確率で起こるといわれています。
ここで気になった方もいるかもしれませんが、発生確率が高い地震はいずれも「海溝型地震」といって、東日本大震災のように海底で起こる地震が該当しています。阪神淡路大震災や熊本地震のように内陸で起こる「活断層型地震」は発生確率が高くありません。
これは地震が起こらない、というわけではありません!活断層型地震は発生間隔が数千年と長いため、10年~50年のスパンで見た際には確率としては低くなるためです。現に阪神淡路大震災が起こる直前の発生確率は0.02%~8%、熊本地震は0%~0.9%でした。
発生確率が低いからといって地震が起きない訳ではないので注意が必要です。
【参考:最近の大型地震が起きる直前に発表されていた地震発生確率】
領域または地震名 | 発生した マグニチュード | 10年以内の 地震発生確率 | 30年以内の 地震発生確率 | 50年以内の 地震発生確率 | 平均発生間隔(上段) 最新発生時期(下段) |
---|---|---|---|---|---|
東日本大震災 (東北地方太平洋沖地震) | M9 | 4%~6% | 10%~20% | 20%~30% | 600年程度 500年~600年前 |
熊本地震 (布田川断層帯) | M7.3 | ほぼ 0%~0.9% | ほぼ 0%~1% | ほぼ 0%~3% | 8,100年~26,000年 6,900年以後~2,200年以前 |
阪神・淡路大震災 (六甲・淡路島活断層帯主部) | M7.3 | ― | 0.02%~8% | ― | 1,700年~3,500年 -(データなし) |
※地震調査研究推進本部 地震調査委員会「今までに公表した活断層及び海溝型地震の長期評価結果一覧(2018年2月9日)」参照
いずれも発生確率はほとんど高くありません。阪神淡路大震災にしても熊本地震にしても、発生確率は1%にも満たないとされながら急にやってきました。
何度も言うようですが、地震は現在の日本の高度な調査技術を持ってしても正確に予測することは難しいものです。いつ、どこで大規模地震が起こってもおかしくはありません。
そして「同じ場所で同じような地震が定期的に起こる」という仮定はつまり、地震の発生が後になればなるほど発生確率が高くなるということ。今日より明日、明日より明後日の方が発生確率は高くなる訳です。
これからの地震のリスク【被害予想】
ではもし本当に大型地震が起きたらどのくらい被害が出るのかを見てましょう。
被害 | 南海トラフ地震 | 首都直下地震 | 東日本大震災(参考) |
---|---|---|---|
マグニチュード | 9.1(想定) | 7(想定) | 9.0 |
震度 | 最大7 (静岡や高知など) | 最大7 (東京や神奈川など) | 最大7 (宮城) |
死者 | 32万3000人 ~33万人 | 1万1000人 | 1万9575人 |
倒壊家屋 | 238万6000棟 | 17万5000棟 | 12万1776棟 (全壊のみ) |
被害総額 | 約137兆円 | 約95兆円 | 約17兆円 |
※首都直下地震 …内閣府「特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)」参照
※南海トラフ地震…内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定(第二次報告)」参照
首都直下地震は予想マグニチュードこそ低いものの、被害は東日本大震災より多いと予想されています。さらに首都圏は公共機関や経済活動の中心地であるため、経済的な被害総額が跳ね上がります。
そして南海トラフ地震は被害範囲が広域にわたり巨大津波も想定される上、名古屋などの主要都市を含むため、被害がとてつもなく甚大になると予想されています。
結局のところ、地震保険は必要なの?
結論から言うと入ったほうが良いです。
確かに保険料は安くはありませんし、保険金も火災保険の半分までしか出ません。しかし、もし大地震が発生して大切な家が倒壊したら、火事で燃えたら、津波に飲まれたら、貯金から立て直し費用を全て出せますか?
被害を受けるのは家だけではありません。家具や日用品など必要なものを買ったり、仮住まいを探したり、仕事がなくなり収入が減ることも考えられます。
そんな時に少しでも家の建て直し費用や修理費用が受け取れれば、家計的にも精神的にも救いとなるはずです。
自分が地震保険に加入しているか分からない、地震保険について相談したい、という方はFP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみましょう。その際には、ご自身が加入している火災保険の保険証を持っていくと相談がスムーズに行えます。
地震大国日本。もちろん国や自治体も対策をしていますが、いざという時は「自分の身は自分で守る。自分の家は自分で守る。」という気持ちで、地震保険を含め日ごろの対策が必要不可欠だと思います。
この記事を書いた人
- mayu
- 東京都在住。現役の保険営業ウーマンとして個人のお客様から保険相談を受けています。ファイナンシャルプランナー2級。趣味は都内お散歩とカラオケ(目標は演歌マスター)
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