最近は国民年金の保険料を払わずに、民間保険である個人年金保険に加入しようと考えている方もちらほら見受けられます。

確かにそれも老後の備えとしての一つの選択肢ではありますが、私は個人的に国民年金に加入せずに個人年金保険だけに加入するという方法は全くお勧めしていません。(両方入るのはお勧めですが)

何故かというと、国民年金の方があらゆる面でお得度が個人年金保険よりも大きく優れているからです。もしも国民年金をやめて個人年金保険に加入を検討しているという方は、是非とも両者の違いをしっかりと見極めた上で判断することをお勧めします。

管理人taka管理人taka

「国民年金は近い将来に破綻して受け取れなくなるのでは・・?」という不安を抱える方もいますが、日本という国が破綻しない限りは国民年金は続くだろうと考えていますので、年金が受け取れないような状況になることはほぼありえないと思います。支給年齢が遅くなる可能性はあるでしょうが・・。

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国民年金と個人年金保険の違い

それでは、まずは国民年金と個人年金保険の違いを見ていきましょう。

まず、基本的な事として言いますが、国民年金は日本年金機構というところが取り仕切っており、基本的に日本国民で20歳から60歳までの人は強制加入となっています(会社員の人は厚生年金として払っています)。

対して個人年金保険は民間の保険会社が販売している保険商品であり、加入するもしないも私たちの自由となっています。

以下の表で情報をまとめてみます。

 国民年金個人年金保険
保険料16,260円(平成28年度)自由に選べる
加入の自由度20歳~60歳は強制加入任意加入なので自由
加入先日本年金機構民間の保険会社
将来の年金額満額で780,100円(平成28年度)掛ける保険料により変動

このようになっています。ただ、これだけだとどちらが良いのか分かりにくいですよね。

なので、お次はどちらがどのくらいお得なのか、実際に計算して検証していってみたいと思います。

国民年金と個人年金保険はどちらがお得なのか?

ではでは、国民年金と個人年金保険はどちらがどのくらいお得なのか、実際に返戻率を計算してみたいと思います。

以下の表の国民年金保険料は平成28年度の金額で、個人年金保険の保険料・返戻率は「年金かけはし(明治安田生命)」で検証しています。

その他の条件は
・契約者の性別は男性
・加入年齢は20歳
・据置期間は5年
・65歳からの平均年齢(84歳)まで生存(参考:平成27年簡易生命表の概況|厚生労働省

 国民年金
(老齢基礎年金)
年金かけはし
(明治安田生命)
加入期間40年35年
月々の保険料16,260円20,000円
保険料払込総額7,804,800円8,400,000円
受取り保険金総額14,821,900円10,670,000円
返戻率190.0%127.0%

計算の結果、国民年金の方が返戻率が63%も高いという結果になりました。もし国民年金の返戻率で個人年金保険を売り出した場合、圧倒的な人気が出ることが予想されます。多分すぐに売り切れます。

また、個人年金保険(年金かけはし)の方は10年という期間限定で受け取るのに対し、国民年金は終身年金のため、長生きすればするほどずっと受給し続けられます。

あと1年(85歳まで)長生きすると、返戻率は200%にまでなります。これは払い込んだ保険料の倍額を貰えるということです。

国民年金がいかにお得かということが、これで分かるかと思います。

女性の場合は返戻率が240%!?

ちなみに女性の場合だと個人年金保険(年金かけはし)の方は返戻率が126.8%となり、男性よりも0.2%下がってしまいます。少しだけ女性の方が不利になるのですね。

ですが国民年金の場合は終身年金であり、長く生きた分だけ年金を多く受け取ることができます。そして女性の方が男性よりも長生きのため、65歳からの平均寿命(女性の場合は89歳)まで生きた場合の国民年金(老齢基礎年金)の返戻率は239.9%という高い数値にまでなってくれます。

返戻率が約240%というのは凄い数値ですね。個人年金保険よりも100%以上も差がでてしまいます。ハッキリ言って勝負になりません。

実は国民年金は国が半額負担してくれている!

でも、おかしくないですか?何故ここまで両者に差が付いてしまうのでしょうか?というか、何故払い込んだ保険料の倍以上も貰えることになるのでしょうか??

実はこれには明確な理由があります。それは「国民年金は半分を国が負担しているから」なのです。つまり、将来貰える老齢基礎年金が1年で70万円となった場合、35万円は現役世代の保険料で負担し、残り半分の35万円は国庫負担(つまり税金)で支払われているのです。

私たちが受け取る年金の半分を税金で賄ってくれているから、ここまで返戻率が高くなるんですね。

国民年金の保険料は全額所得税控除のため、さらにお得!

また、国民年金は支払った保険料の全額が所得税から控除されるため、節税の面でもかなり役立ちます。どのくらい節税できるのかというと、一般的な経済状況の場合は生涯で150万円くらい、夫婦で国民年金に入っている場合は300万円も節税できてしまいます。

個人年金保険も控除はありますが、全額を控除してくれる訳ではないので、節税の割合でも国民年金の方がかなりお得になるのです。

国民年金はお金だけではない!障害年金と遺族年金の存在

ここまで読んだ方は、将来の年金額の面でいかに国民年金が個人年金保険と比べてお得かが分かったかと思います。ですが、国民年金のメリットはそれだけではないのです。

人生何があるか分かりませんので、もしかしたら事故で障害状態になってしまうか、または死亡してしまう可能性もゼロではありません。

そんな時にも国民年金に加入していると大きな助けになってくれます。国民年金加入時に事故に遭い、障害等級1級または2級の障害を負った場合は障害基礎年金が給付されるようになります。

障害基礎年金は障害状態と認められている間はずっと貰いつづけることができます。

障害基礎年金の受給額については以下をご覧ください。

障害基礎年金の受給額
【1級】 780,100円×1.25+子の加算
【2級】 780,100円+子の加算

【子の加算】
第1子・第2子 各224,500円
第3子以降 各74,800円

※ 子の加算は18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない場合のみ

また、もしも国民年金に加入している間に自分が事故で亡くなった場合、遺族基礎年金が家族に支払われます。遺族基礎年金は子供が18歳で高校卒業するまで支給され続けます。

ただし、配偶者はいるけど子供がいない場合、または子供が高校卒業した場合(18歳到達年度の末日を過ぎた場合)は支給されません。

遺族基礎年金の受給額については以下をご覧ください。

遺族基礎年金の受給額
780,100円+子の加算

【子の加算】
第1子・第2子 各224,500円
第3子以降 各74,800円

※ 子が18歳到達年度の末日(3月31日)を経過すると受給できなくなる

この2つは国民年金の保険料を払っていないと受給の対象外になってしまいます。個人年金保険は民間企業の商品であり、ここまでの保障は当然ながら期待できませんので、万が一を想定すると国民年金の保険料を払っていないとかなり痛い目を見ることになります。

つまり、国民年金には加入しておいた方が良いということです。まあ、そもそも国民年金は強制加入なのですが・・。

国民年金の欠点

ここまでは国民年金についてべた褒めでしたが、やはり何にでも欠点はあるものです。国民年金にも当然気になる部分はありますので、そこのところも把握しておきましょう。

その.1 掛けられる保険料が決まっている&少ない

国民年金は高返戻率で保障内容も良く、全額所得税控除という素晴らしい制度ではありますが、保険料は月々16,260円と決められています(金額は平成28年度のものです。年によって異なります)。

これ、ちょっと少ないですよね。この保険料に応じて65歳からの老齢基礎年金額が決められるので、出来ればもっと増やしたいところなんですけどね・・。

ですがこれは個人で好きに増やしたりすることは出来ないので、将来に向けてしっかり年金を増やしておきたいという場合は国民年金だけで対応することは無理になってきます。

その.2 早く死んだ場合は損

ちょっと縁起でもない話になるのですが、国民年金は終身年金なのは良いのですが、早めに死んだ場合は特に何の保障もありません(遺族基礎年金はありますが、この歳(65歳)にはお子さんは18歳以上になっている場合が多いため、あまり活躍は期待できません・・)。

つまり、年金を貰いだした翌年(66歳)で亡くなった場合、780,100円しか受け取れないことになります。これは保険料の払込総額の10分の1にしかなりません。つまり信じられないくらいの損になってしまうのです。

対して個人年金保険の場合は、年金受取り期間中に死亡した場合でも残額を未払い金として受け取ることができます。つまり損をすることはありません。

早く死亡することを想定する人はいないと思いますが、国民年金は早く死亡すると損をするということは知っておいてください。

受給年齢が引き上げられる可能性も

国民年金(老齢基礎年金)は現在は65歳から受給することになっていますが、将来的にはもしかしたら受給年齢が引き上げられるかも知れません(70歳とか)。

これはかなり切実な問題です。現に厚生年金の方は昭和60年までは60歳からの受取だったのですが、昭和61年の法改正で段階的ではありますが65歳からの受給に変わってしまったのです。

国民年金は元々65歳からの受給なのでこれまで変化の歴史はないのですが、少子化や不景気が続くと国民年金ももしかしたら受給年齢を引き上げられるかも知れません。もしくは年金額も減らされるという可能性もあります。

そうなると国民年金のメリットがかなり減ってしまいますので、もしかしたら個人年金保険と立場が逆転してしまうという可能性もあります。ただ、そのような時代になった場合、個人年金保険も返戻率の高い商品は出てこないと思いますが・・。

国民年金は必須だが、両方加入するのがベスト

以上、国民年金のメリットとデメリットを長々と語ってきました。

デメリット部分はかなり気になるところではありますが、とはいえ個人年金保険と比べると国民年金のメリットの方が圧倒的に大きいのが現状です。

国民年金の保険料を払わずに個人年金保険の加入を検討する方もいますが、個人的には全然お勧めできません。どちらかを選ぶのであれば、国民年金の保険料をしっかりと納付しておくことを強くお勧めします。

経済的に余裕がない場合は免除や納付猶予を利用しよう

もしもお金が無くて国民年金の保険料を払えない場合は、必ずお近くの市役所・区役所の年金課へ相談してください。そうすれば保険料の免除や納付猶予を受けられるかも知れませんので。

ただし、保険料の免除・納付猶予を受けた期間は受給資格期間には算入されるものの、年金額の計算時には反映されません(免除の場合は少し反映されます)。

そのため、将来的に余裕が出来たら後納制度や任意加入制度を利用して、払っていない期間分の保険料を納めるようにしましょう。そうすれば65歳からの年金額を増やすことができます。

【重要】
平成30年9月30日をもって後納制度は終了しました

余裕がある場合は個人年金保険の加入も検討を

もし国民年金の保険料を払ってもまだ家計に余裕がある場合は、貯金も良いですが個人年金保険への加入を検討してみてください。

国民年金(老齢基礎年金)は満額で一人当たり78万円しか貰えませんので、これだけでは不安が残ります。なので足りない分を貯めていかないといけない訳ですが、将来的にみれば個人年金保険に加入した方が払込んだ保険料以上のお金が返ってくるので、貯金をするよりもメリットが高いのです。

現状の日本の金利では銀行に預けてもほぼ増えませんので、貯金するよりも個人年金保険に入る方が良いです。そのため、老後の資金作りを真剣に考える場合は個人年金保険は忘れずに検討するようにしてください。

個人年金保険のお勧め商品についてはこちらのページをご覧ください。自営業の方にお勧めの共済も紹介しています。
個人年金保険 おすすめの比較と評価ランキング

年金生活が不安な方はプロのFPに相談を

国民年金だけの場合、将来の年金生活に不安を感じる方も少なくありません。そんな不安を何とかしたい方は、無料の保険宗田団サービスを利用し、お金のスペシャリストであるFPに相談してみてはいかがでしょうか?

お勧めの保険相談サービスについては以下のページでまとめていますので、興味がある方は見ておいてください。特に1位にランクしている「保険見直しラボ」は非常にお勧めですので、質の良いベテランFPを探している方はチェックしておくことをお勧めします。

この記事を書いた人

taka
taka
当サイト「takaの保険節約術」運営者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。骨折&手術で身をもって保険の大切さを知って以降、独学で身に付けた保険の知識を紹介するようになりました。FPから紹介された保険の見直しもやってます。保険だけでなく安定度の高い資産運用方法を常に模索しています。ラーメン、焼肉、ラケットスポーツ好き。

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