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入院生活を快適に過ごすことができる差額ベッド(正式名称:特別療養環境室)。

他の人の目を気にせず、自分のスペースがしっかり確保されているため、落ち着いて入院をしたいという方には大きなメリットとなっています。ですが入院費がかさむため、一般的な経済状況の方であればむしろ差額ベッドは利用したくないという方も多いはず。

このページでは、そんな差額ベッド代を出来れば利用したくない、利用したけど支払いたくない・・と思っている一般家庭の方の視点に立って差額ベッドを解説していきます。

※ 実際に支払いに関して病院側との対立が生じるケースもありますので、まだまだ一般人にとってはありがたくない制度と言えるのかも知れません。

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差額ベッドの条件

まず初めに、差額ベッド(特別療養環境室)の条件についてみてましょう。

  1. 病室の病床数は4床以下であること。
  2. 病室の面積は一人当たり6.4平方メートル以上であること。
  3. 病床のプライバシーを確保するための設備があること。
  4. 少なくとも「個人用の私物の収納設備」、「個人用の照明」、「小机等及び椅子」の設備があること。

以上の4つの要件を満たしたものが差額ベッドと認められています。

高額療養費制度の対象外なので、一般家庭ではやはり利用したくないですよね・・

差額ベッド代は通常の入院費とは別にお金がかかります。しかもこの差額ベッド代は高額療養費制度の対象外のため、ひと月の医療費が大きく跳ね上がるという嫌な可能性を持っているのです。

高額療養費制度を簡単に解説

高額療養費制度が分からない方に向けて簡単に説明すると、ひと月分の医療費をかなり抑えてくれるという、日本国民(ほぼ)全員の力強い味方と成ってくれている制度のことです。この高額療養費制度により、いくら手術や入院で医療費が掛かろうが、月に8万円~9万円を超えて請求されることはほとんどなくなるのです。

例えば手術や入院で月の医療費が100万円(3割負担なので実質30万円)かかったとしても、実際の自己負担額は8万7,430円で済むようになっているのです。計算式は以下の表を参考にしてください(2016年5月現在)。

この高額療養費制度は所得によって自己負担額に差があります。以下の表を見れば分かりますが、一般的な家庭(年収770万円未満)の方の場合は8万円に少しプラスした金額で済むようになっているのです。

所得自己負担額
年収1,160万円以上252,600円+(医療費-842,000円)×1%
年収770万円~1,160万円未満167,400円+(医療費-558,000円)×1%
年収370万円~770万円未満80,100円+(医療費-267,000円)×1%
年収370万円未満57,600円
低所得者35,400円

差額ベッド代は高額療養費制度の対象外!

こんなに良い制度があるなら、差額ベッド代が含まれても安心だね!・・となってくれればいいのですが、最初に説明した通り差額ベッド代は高額療養費制度の対象外になるんですよね。

例えば先程の解説のように3割負担で30万円かかるような手術・入院をした場合でも自己負担額は8万7,430円で済みますが、それに差額ベッド代が10万円かかってしまった場合、8万7,430円+10万円=18万7,430円という金額をひと月で支払わなければいけないのです。

これはかなり痛いですよね・・。

確かに経済的に余裕のある人にとっては入院生活を快適にできるのでとても役立つものであるのは間違いないと思いますが、私たちの様な一般の経済状況の方の場合はむしろ差額ベッドは出来れば利用したくない・・と思ってしまうのも無理がないのです。

差額ベッド代はいくらかかるのか

先程の例で、「ひと月で10万円の差額ベッド代がかかった」と解説しましたが、これは決して特殊な場合ではなく、むしろ10万円程度であれば誰にでも請求されかねない金額なのです。

では、差額ベッド代は実際のところいくらかかるものなのでしょうか。色々なパターンで見ていきましょう。

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まずは差額ベッド代の費用別割合です。(厚生労働省平成20年公表)

  1. 1日あたり1,000円以下・・11.9%
  2. 1日あたり1,001円~2,000円・・15.9%
  3. 1日あたり2,001円~3,000円・・15.2%
  4. 1日あたり3,001円~4,000円・・10.0%
  5. 1日あたり4,001円~5,000円・・12.8%
  6. 1日あたり5,001円~10,000円・・22.3%
  7. 1日あたり10,000円超・・11.9%

1日あたり4,000円以上が50%近くあります。(厚生労働省平成24年公表)

お次に1人部屋~4人部屋での差額ベッド代を見てみます。

  • 1人部屋・・7,558円
  • 2人部屋・・3,158円
  • 3人部屋・・2,774円
  • 4人部屋・・2,485円

ちなみに1日平均は5,829円となっています(厚生労働省平成24年公表)。つまり10日入院で6万円近く、20日も入院すると10万円を超えてしまいます。

最近は入院日数が減少している傾向にあるとはいえ、1日5,000円以上の差額ベッド代がかかる場合は比較的簡単に5~10万円に達してしまうのが分かると思います。

病院によってはもっと高くなるケースも

差額ベッド代は平均で5,000円~6,000円くらいで、安ければ1日あたり3,000円以内で抑えられる病院もあることがデータ上から分かります。

ただし、これはあくまで平均であって、病院によって金額がかなり異なるのが現状です。大きな病院にインフルエンザで緊急入院した結果、数日しか入院していないのに10万円という差額ベッド代を請求されたというケースもあります。

ちなみに、大病院になると差額ベッド代は個室で2万円~7万円(もしくはそれ以上)、4人部屋で7,000円以上など、かなりの金額になります(参照:東京慈恵会医科大学)。

お金持ちの方には良いでしょうが、一般人にはかなり厳しい金額と言えますね。

病院側の都合で差額ベッドを利用した場合は支払わなくても良い!けど実際は・・

長期入院の場合でも短期入院の場合でも、かなりの費用がかかってしまう差額ベッド代。

基本的には自分で希望した場合に差額ベッド代が発生する個室や4人部屋を利用することができるようになってるのですが、現状では自分で希望していないにも関わらず、一般のベッドがないなどの病院側の都合で個室を利用することになるケースが多々あります。

ですが、このような病院側の都合で個室などの差額ベッド代が発生する部屋に入院した場合、実は私たちは差額ベッド代を支払わなくても良いということになっています。

具体的には、以下のような場合には差額ベッド代を支払う必要がないとされています。

  • 患者さん側から同意書による同意の確認を行っていない場合
  • 患者さん本人の「治療上の必要」により差額ベッド室に入院した場合
  • 病棟管理の必要性等から差額ベッド室に入院させた場合であって、実質的に患者さんの選択によらない場合

(引用:差額ベッド(特別療養環境室)について – 埼玉県

簡単に言うと、自分で希望していないのに病院側の都合で利用することになった場合、または治療上の必要があって個室になった場合、あるいは自分が感染症などにかかっていて個室以外では管理が難しいなどの理由で差額ベッド代が発生する部屋に入院した場合は、差額ベッド代を支払う必要はないとされているのです。

ただし、実際は請求されるケースがとても多いらしい

とはいうものの、どうやら病院によってはこちらが支払う必要がない状況での差額ベッド代でさえ請求してくることが多々あるようです。

こちらのブログを読んでみると、その実態がよく分かります。
差額ベッド代とは(入院時の差額ベッド代は支払わなくてもよい?・その1) – いつか子供に伝えたいお金の話

厚生労働省は「自分で希望していない場合は差額ベッド代は払わなくて良いよ」と言ってくれているのですが、実際の現場ではどうやらその方針でやっていない病院もあるようなのです。この件に関してはトラブルになるケースも多々あり、結果的に看護師さんともめてしまうこともあるのです。

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これは私たちにとってとても悲しいことではあり、大きな問題です。私たちが「いや、病院の都合で個室に入れられたのだから、差額ベッド代は支払う必要はないのでしょう?」という真っ当なことを言っただけなのに、看護師さんから「厄介者、クレーマー」などのレッテルを貼られ、入院生活での看護師さんとの関係がかなり悪化してしまう可能性があるからです。

入院中の患者にとって、看護師から嫌われるのは精神的にも肉体的にもかなりダメージが大きいのは簡単に想像できるかと思います。もちろん看護師さんもプロなので故意に何らかの失敗をするということはないでしょうが、笑顔での治療と敵意がこもった治療とでは治るスピードも変わってきそうな気がするのは何となく分かることだと思います。

然るべきところに相談するのもアリ

看護師さんをもめるのが嫌な場合は泣き寝入りしてしまうのもやむを得ない選択肢なのかも知れませんが、不当な請求に対しては基本的に支払う必要はありませんので、もし病院側から請求された際は厚生労働省が発表している留意事項が書いてあるPDF
差額ベッドについて
こちらを参考に、決して感情的にならずに交渉をしていくこともやってみるべきです。

また、どうしても解決に結びつかないと感じた場合は「厚生局」や「NPO法人 ささえあい医療人権センターCOML (コムル)」などに電話相談するということも試してみてください。ただし、解決したとしても、もしかしたら看護師さんとの良好な関係はなくなってしまうかも知れないというデメリットもあることは念頭に置いた方が良いですね。

この記事を書いた人

taka
taka
当サイト「takaの保険節約術」運営者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。骨折&手術で身をもって保険の大切さを知って以降、独学で身に付けた保険の知識を紹介するようになりました。FPから紹介された保険の見直しもやってます。保険だけでなく安定度の高い資産運用方法を常に模索しています。ラーメン、焼肉、ラケットスポーツ好き。

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