学生時代、または失業中に国民年金の保険料を免除してもらったことがある方も多いと思います。

保険料を払わなくて良い(または少なくなる)上に受給資格期間にも算入してくれて、さらに将来の年金額にも一定の割合で加算してくれるので、お金がない当時としては「免除って本当に素晴らしい制度だ!」と思った方も少なくないと思います。

しかしながら当時とは違ってお金に余裕が出てきた現在、免除された保険料を追納しようかどうか迷っているのではないでしょうか?追納した方が確実にお得なら追納しますが、損になる可能性があるなら払いたくないですからね。

このページでは国民年金保険料の免除を受けた場合、追納した方がお得なのかどうかを具体的な計算を元に考察していますので、よければ参考にしてみてください。

追納と後納の違いについて

もしかしたら追納と後納がごっちゃになっている方もいると思いますので、この2つについて先に解説しておきます。

  • 追納:免除や猶予の承認を受けた期間について、後から納付すること(過去10年分まで可)
  • 後納:時効で収めることができなかった保険料を、後から納付すること(平成30年9月までは過去5年分まで可)

このページでは追納について解説しています。

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まずは保険料の免除を受けたことによるメリット部分を知っておこう

まず初めに、国民年金保険料の免除を受けた場合はどのようなメリットがあるのかを知っておきましょう。

基本的なメリットについてはページの冒頭でも解説していますが

  1. 免除期間中は保険料を払わなくて良い(または少なくなる)
  2. 免除期間も受給資格期間に算入される
  3. 免除の金額により、一定の割合で年金に加算される(すぐ下で解説)

となっています。

2番について簡単に解説すると、65歳からの老齢基礎年金は、国民年金への加入期間が10年間(平成29年8月1日から25年から10年に短縮)の納付期間がないと受給資格が発生せず、老齢基礎年金が0円になります。

そのため、例え保険料を免除されている期間であっても「受給資格を満たすための期間として算入される」というのは、なかなかありがたい点だと言えます。

で、3番(1番も関係ありますが)についてはさらに解説が必要になります。まず保険料の免除は「全額免除」だけでなく、当時の経済状況によって「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類があります。(学生であれば「学生納付特例」も受けられます)

例えば保険料が1万6千円だった場合、全額免除なら0円になるし、4分の1免除なら4千円が免除されるので保険料は1万2千円になるということですね。

で、この免除金額の割合により、65歳からの老齢基礎年金に加算される割合が決まります。詳しくは下の表をご覧ください。

年金反映額
(21年4月分以降)
年金反映額
(21年3月分まで)
全額免除 1/2 1/3
4分の3免除 5/8 1/2
半額免除 3/4 2/3
4分の1免除 7/8 5/6
学生納付特例 無し 無し

例えば21年4月分以降で保険料を全額免除してもらった場合は免除期間の半分を払ったことになるし、半額免除の場合は3/4を払ったことになります。

つまり、払っていない金額の半分を国庫が負担してくれているという感じで覚えておくと良いでしょう。21年3月分までについては払っていない金額の1/3が国庫負担となります。

ただし、学生納付特例については国庫負担はないため、年金額に反映されることはありません。

浮かんでくる疑問・・

で、ここで一つの疑問が浮かんできます。

例えば全額免除をしてもらった場合でも半分が年金に反映されるのであれば、その免除分については追納する必要がないのでは?むしろ追納した方が損になるのでは??という疑問です。

また、追納する場合は当時の保険料にプラスして経過期間に応じた加算額も加わります。それらを考慮しても追納した方がお得なのかどうかは非常に気になるところですよね。

以下、その疑問を解消すべく、実際に計算してみることにしました。果たして追納することはお得なのでしょうか、それとも損になってしまうのでしょうか・・。

国民年金保険料の免除分を追納した際にお得かどうかを検証してみた

では、実際に計算してみましょう。ここではいくつかの状況別に分けて計算してみたいと思います。

かなり長くなっていますので、読むのが面倒な方は最後のまとめだけ見ていただければと思います。

それでは、いきます。

その.1 21年4月分以降の全額免除がある場合

まずは21年4月分以降の全額免除がある場合について、追納する方がお得かどうかを計算してみます。

条件は以下のように設定します。

・追納の時期は平成28年
・全額免除なので国庫負担は1/2
・免除期間は平成22年と23年の2年間
・平成22年度の追納分は15,490円/月
・平成23年度の追納分は15,280円/月
・老齢基礎年金の満額は780,100円(平成28年分)

まず初めに、平成28年度の老齢基礎年金の満額は780,100円になります。国民年金を全期間(40年間)払った場合は、この金額を貰うことができます。

では、上記の条件の時は年金受給額はいくらになるのでしょうか?この場合の計算式は以下になります。

【全額免除の期間が2年ある場合の年金受給額】
780,100円×(456ヶ月+24ヵ月×1/2)/480ヶ月
760,598円

満額と比べると、780,100円-760,598円=19,502円となり、年金受給額は1年間で19,502円が少なくなる計算となりました。1ヶ月分に直すと満額との差額は1,625円少なくなる計算です。

では、お次に平成22年と平成23年の追納分の保険料を計算してみます。

【2年間の追納保険料の総額】
・平成22年分:15,490円×12ヶ月=185,880円
・平成23年分:15,280円×12ヶ月=183,360円
・185,880円+183,360円=369,240円

2年間分の保険料を全て追納した場合、保険料の総額は369,240円となります。この金額を先程の「満額との差額」で割ることにより、何歳からお得になるかが分かります。

369,240円÷19,502円=18.93…

となるため、19年後、つまり65歳から貰いだしてから84歳になってようやくお得になる計算になるのです。

この84歳というのは男性の平均寿命です。つまり、男性の場合はこれより長生きするつもりなら追納しておいた方がお得になり、これより早く死ぬと想定した場合は追納すると損ということになります。

何歳まで生きるのかは誰にも分からないため、男性の場合は払った方が良いのかどうかの判断は個人に任せるという形になってしまいます。中途半端な答えになってしまい、申し訳ありません・・。

個人的には、今後はさらに寿命が伸びるだろうと考えられますので、払っておいた方がお得になるのではないか・・と思っています。ただし、金銭的に厳しい、もしくは確定拠出年金などへの投資を考える場合は、無理して追納しなくても良いかと思います。

ただし、女性の場合は89歳が平均寿命なので、そこまで生きた場合は19,502円×5年間=97,510円がお得になります。平均寿命を考えるとおそらくはかなり多くの女性がお得になるだろうと考えられます。

なので、女性の場合は追納しておいた方が良いと言えるでしょう。

その.2 21年3月分までの全額免除がある場合

21年3月分より以前の全額免除がある場合、国庫負担は1/2ではなく1/3になってしまいます。その期間に全額免除がある場合において、追納する方がお得かどうかを計算してみます。

条件は以下のように設定します。

・追納の時期は平成28年
・全額免除なので国庫負担は1/3
・免除期間は平成18年と19年の2年間
・平成18年度の追納分は15,000円/月
・平成19年度の追納分は15,030円/月
・老齢基礎年金の満額は780,100円(平成28年分)

上記の条件の時は年金受給額はいくらになるのでしょうか。この場合の計算式は以下になります。

【全額免除の期間が2年ある場合の年金受給額】
780,100円×(456ヶ月+24ヵ月×1/3)/480ヶ月
754,097円

満額と比べると、780,100円-754,097円=26,003円となり、年金受給額は1年間で26,003円が少なくなる計算となりました。1ヶ月分に直すと満額との差額は2,167円少なくなる計算です。

では、お次に平成18年と平成19年の追納分の保険料を計算してみます。

【2年間の追納保険料の総額】
・平成18年分:15,000円×12ヶ月=180,000円
・平成19年分:15,030円×12ヶ月=180,360円
・180,000円+180,360円=360,360円

2年間分の保険料を全て追納した場合、保険料の総額は360,360円となります。この金額を先程の「満額との差額」で割ることにより、何歳からお得になるかが分かります。

360,360円÷26,003円=13.85…

となるため、14年後、つまり65歳から貰いだしてから79歳になってはじめてお得になる計算です。

79歳という年齢は男性の平均年齢よりも5歳若く、女性の平均年齢よりも10歳若いです。そのため、高い確率で払っておいた方がお得になるという計算になります。

21年3月分までの全額免除がある場合は、男女問わず追納しておいた方が無難と言えます。

その.3 21年4月分以降の半額免除がある場合

お次は21年4月分以降の半額免除がある場合について、追納する方がお得かどうかを計算してみます。

条件は以下のように設定します。

・追納の時期は平成28年
・半額負担なので国庫負担は3/4
・免除期間は平成22年と23年の2年間
・平成22年度の追納分は15,490円/月
・平成23年度の追納分は15,280円/月
・老齢基礎年金の満額は780,100円(平成28年分)

上記の条件の時は年金受給額はいくらになるのでしょうか?この場合の計算式は以下になります。

【半額免除の期間が2年ある場合の年金受給額】
780,100円×(456ヶ月+24ヵ月×3/4)/480ヶ月
770,349円

満額と比べると、780,100円-770,349円=9,751円となり、年金受給額は1年間で9,751円が少なくなる計算となりました。1ヶ月分に直すと満額との差額は813円少なくなる計算です。

では、お次に平成22年と平成23年の追納分の保険料を計算してみます。

【2年間の追納保険料の総額】
・平成22年分:7,750円×12ヶ月=93,000円
・平成23年分:7,640円×12ヶ月=91,680円
・93,000円+91,680円=184,680円

2年間分の保険料を全て追納した場合、保険料の総額は184,680円となります。この金額を先程の「満額との差額」で割ることにより、何歳からお得になるかが分かります。

184,680円÷9,751円=18.93…

となるため、19年後、つまり65歳から貰いだしてから84歳になってようやくお得になる計算になるのです。

また、この数値は全額免除の時とほぼ同じです。そのため、4分の3免除、4分の1免除で計算した場合も同じ数値になるため、21年4月分以降の免除がある場合はどのパターンでも84歳になってからはお得になるということが分かります。

その.4 21年3月分までの半額免除がある場合

もう答えはほぼ出ていますが、一応21年3月分までの半額免除がある場合についても計算してみます。

条件は以下のように設定します。

・追納の時期は平成28年
・半額免除なので国庫負担は2/3
・免除期間は平成18年と19年の2年間
・平成18年度の追納分は7,500円/月
・平成19年度の追納分は7,520円/月
・老齢基礎年金の満額は780,100円(平成28年分)

上記の条件の時は年金受給額はいくらになるのでしょうか。この場合の計算式は以下になります。

【半額免除の期間が2年ある場合の年金受給額】
780,100円×(456ヶ月+24ヵ月×2/3)/480ヶ月
767,098円

満額と比べると、780,100円-767,098円=13,002円となり、年金受給額は1年間で13,002円が少なくなる計算となりました。1ヶ月分に直すと満額との差額は1,084円少なくなる計算です。

では、お次に平成18年と平成19年の追納分の保険料を計算してみます。

【2年間の追納保険料の総額】
・平成18年分:7,500円×12ヶ月=90,000円
・平成19年分:7,520円×12ヶ月=90,240円
・90,000円+90,240円=180,240円

2年間分の保険料を全て追納した場合、保険料の総額は180,240円となります。この金額を先程の「満額との差額」で割ることにより、何歳からお得になるかが分かります。

180,240円÷13,002円=13.86…

となるため、14年後、つまり65歳から貰いだしてから79歳になってはじめてお得になる計算です。

79歳という年齢は男性の平均年齢よりも5歳若く、女性の平均年齢よりも10歳若いです。そのため、高い確率で払っておいた方がお得になるという計算になります。

21年3月分までの全額免除がある場合は、男女問わず追納しておいた方が無難と言えます。

また、この数値は全額免除の時とほぼ同じです。そのため、4分の3免除、4分の1免除で計算した場合も同じ数値になるため、21年3月分までの免除がある場合はどのパターンでも79歳になってからはお得になるということが分かります。

その.5 学生納付特例を利用した場合

それでは、最後に学生納付特例による免除を受けた場合の追納についても計算してみます。

条件は以下のように設定します。

・追納の時期は平成28年
・学生納付特例なので、国庫負担はなし
・免除期間は平成18年と19年の2年間
・平成18年度の追納分は15,000円/月
・平成19年度の追納分は15,030円/月
・老齢基礎年金の満額は780,100円(平成28年分)

上記の条件の時は年金受給額はいくらになるのでしょうか。この場合の計算式は以下になります。

【学生納付特例の期間が2年ある場合の年金受給額】
780,100円×456ヶ月/480ヶ月
741,095円

満額と比べると、780,100円-741,095円=39,005円となり、年金受給額は1年間で39,005円が少なくなる計算となりました。1ヶ月分に直すと満額との差額は3,250円少なくなる計算です。

では、お次に平成18年と平成19年の追納分の保険料を計算してみます。

【2年間の追納保険料の総額】
・平成18年分:15,000円×12ヶ月=180,000円
・平成19年分:15,030円×12ヶ月=180,360円
・180,000円+180,360円=360,360円

2年間分の保険料を全て追納した場合、保険料の総額は360,360円となります。この金額を先程の「満額との差額」で割ることにより、何歳からお得になるかが分かります。

360,360円÷39,005円=9.23…

となるため、10年後、つまり65歳から貰いだしてから75歳になってはじめてお得になる計算です。

75歳という年齢は男性の平均年齢よりも9歳若く、女性の平均年齢よりも14歳若いです。そのため、男女とも追納しておいた方がほぼお得になるという計算になります。

そのため、学生納付特例の保険料免除を受けた方は、男女問わず出来るだけ追納しておきましょう。

まとめ

これまではちょっと計算式が多くて分かりにくい点もあったかと思いますので、以下に答えを簡単にまとめた表を用意しておきます。

【追納した方がお得かどうかの評価表】

男性 女性
21年4月分以降の
免除がある場合
どちらとも言えない お得
21年3月分までの
免除がある場合
お得 非常にお得
学生納付特例 非常にお得 非常にお得

「21年4月分以降の免除がある男性」の場合は追納してもしなくてもどちらでも良いと判断させていただきます。他に投資対象(確定拠出年金など)があるなら、そちらを払うことを検討した方が良いかも知れません。

それ以外については、免除された期間分は全て追納した方が良いでしょう。女性の方はどのパターンでも追納しておくべきですね。特に学生納付特例を受けていた方(男女問わず)は、追納した方が断然お得になりますので、社会人になってから忘れずに払うようにしましょう。

また、免除には「全額免除」「4分の3免除」「半額免除」「4分の1免除」の4種類がありますが、どの免除パターンでも上の表に当てはまります。

これから追納しようかどうか迷っている方は、この表を是非とも参考にしていただけたらと思います。

【注意点!】追納の期間は10年なので払い忘れのないように

追納ができるのは、過去10年間の免除期間分に限られています。「後でいいかな・・」と考えていると払い忘れる可能性がありますので、出来るだけ今のうちに追納しておいた方が良いでしょう。

また、もし10年が過ぎてしまったとしても国民年金の任意加入制度を利用することで、60歳から65歳の間に納付することが可能になります。ですが国民年金の保険料は毎年上がっていきますので、任意加入制度を利用するよりも出来るだけ追納できる時期に払っておいた方が良いかと思います。

追納の申請方法と申込み場所

お近くの年金事務所で申し込みを行い、厚生労働大臣の承認を受け次第、納付書が渡される手はずになっています。

その納付書で追納の保険料を支払うことができますが、口座振替とクレジットカード納付はできないので注意してください。

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