国民年金の保険料を納めるのが経済的に厳しい場合、申請することで保険料の免除や猶予を受けることが可能です。

免除には全額~4分の1までの4種類があります。さらに配偶者から暴力を受けている場合は「特例免除」を受けることが可能となっています。

また、猶予については学生時代に適用できる「学生納付特例」、50歳未満なら「納付猶予制度」を利用することができます。

未納のままにしておくと、かなりデメリットが大きいです(詳しくは⇒国民年金保険料の未納・滞納による7つのデメリットを知っておこう!)。そのため、所得が少なくて生活が厳しいという理由で保険料を支払えない場合は、必ず免除・猶予の申請をしておきましょう。

このページでは国民年金保険料の免除と猶予についての仕組みや条件、申請方法などを解説していますので、よければ参考にしてみてください。

国民年金の免除と猶予の違い

まず初めに、国民年金の保険料には「免除」と「猶予」があり、それぞれ待遇が異なります。以下、それぞれの違いを表にまとめておきました。

学生納付特例も「猶予」の項目に入りますが、通常の猶予と異なる点があるため、別枠で用意しました。

免除猶予学生納付特例
対象制限なし50歳未満学生
受給資格期間への算入
年金額への反映
(一定の割合)
××
適用の難易度高い
(世帯の所得が対象)
低め
(本人・配偶者が対象)
低い
(本人の所得のみ対象)

免除の場合は「年金額への反映」という大きなメリットがありますが、世帯全員の所得が対象になってしまうため、例えば自分が無職で収入がなかったとしても、親の収入がある場合は「親が払えるじゃないか!」となり、免除対象にはならないのが残念なところです。

その点、猶予は本人・配偶者の所得が対象となるため、親がいくらお金を持っていようが関係なく猶予を受けることができるようになっています。ただし、免除と比べるとハードルは低いのですが、年金額には反映されないため、将来の年金額の低下を考慮すると追納制度を利用し、お金がある時に払っておく必要が出てきます。

ちなみに、免除も猶予も過去10年以内であれば遡って納めることができます(これを追納と言います)

国民年金保険料の免除の仕組み、条件等について

それでは、ここからは「免除」の条件や仕組みなどについて解説していきます。

免除には全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除がありますが、それぞれ承認されるための条件が異なります。

基本的には前年の所得が下表の金額よりも少ない場合に適用されます。基準となる所得金額は何人世帯かで異なりますので、当てはまるところを表でチェックしてみてください。

全額免除4分の3免除半額免除4分の1免除
4人世帯
(夫婦・子供2人)
162万円
(257万円)
230万円
(354万円)
282万円
(420万円)
335万円
(486万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
92万円
(157万円)
142万円
(229万円)
195万円
(304万円)
247万円
(376万円)
単身世帯57万円
(122万円)
93万円
(158万円)
141万円
(227万円)
189万円
(296万円)

※ ()内は収入ベースでの金額です

管理人taka管理人taka

この金額は所得金額を表したものであり、実際の収入は()内に書いています。収入に社会保険料控除等を行った金額が所得となります。(これについての計算式は各免除の項目で解説しています)。

それでは、それぞれの免除の解説をしていきたいと思います。

全額免除の詳細、条件

全額免除とは、その名の通り保険料の全額が免除される制度です。

免除された期間は受給資格期間へ算入されますし、年金額の反映もされるようになっています。平成21年4月分以降は、2分の1が国庫負担となっているため、免除されている期間の半分が年金に反映されるようになります(平成21年3月分までは3分の1が国庫負担)。

所得の基準

全額免除の条件は以下のようになっています。

前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

※ 本人・世帯主・配偶者 各々の所得

全額免除
4人世帯
(夫婦・子供2人)
162万円
(257万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
92万円
(157万円)
単身世帯57万円
(122万円)

4分の3免除

保険料の4分の3が免除される制度です。

免除された期間は受給資格期間へ算入されますし、年金額の反映もされるようになっています。平成21年4月分以降は、「5/8」が年金額に反映されるようになります(平成21年3月分までは1/2)。

所得の基準

4分の3免除の条件は以下のようになっています。

前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※ 本人・世帯主・配偶者 各々の所得

4分の3免除
4人世帯
(夫婦・子供2人)
230万円
(354万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
142万円
(229万円)
単身世帯93万円
(158万円)

半額免除

保険料の半額が免除される制度です。

免除された期間は受給資格期間へ算入されますし、年金額の反映もされるようになっています。平成21年4月分以降は、「6/8」が年金額に反映されるようになります(平成21年3月分までは2/3)。

所得の基準

半額免除の条件は以下のようになっています。

前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※ 本人・世帯主・配偶者 各々の所得

半額免除
4人世帯
(夫婦・子供2人)
282万円
(420万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
195万円
(304万円)
単身世帯141万円
(227万円)

4分の1免除

保険料の4分の1が免除される制度です。

免除された期間は受給資格期間へ算入されますし、年金額の反映もされるようになっています。平成21年4月分以降は、「7/8」が年金額に反映されるようになります(平成21年3月分までは5/6)。

所得の基準

4分の1免除の条件は以下のようになっています。

前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※ 本人・世帯主・配偶者 各々の所得

4分の1免除
4人世帯
(夫婦・子供2人)
335万円
(486万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
247万円
(376万円)
単身世帯189万円
(296万円)

免除の申請方法

基本的には、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出するようにしてください。申請書は窓口に備え付けてあります。

申請の際、国民年金手帳(または基礎年金番号通知書)が必ず必要となりますので、忘れずに持っていきましょう。また、場合によっては前年の所得を証明する書類なども必要になりますので、関係がありそうな書類は持って行った方がいでしょう。

それと、基本的に免除申請は毎年するものですので、忘れずに申請するようにしましょう。ただし、翌年度以降も申請を行うことをあらかじめ希望する場合は、申請書の継続希望区分欄の「する」に○を付けて提出することで、継続して申請があったものとして審査を行います。(所得の申告は毎年度必要となりますが)

不明な点などあれば、お近くの年金事務所へお問い合わせください。
全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

特例免除(配偶者からのDVがある方)

配偶者から暴力をうけられている方で加害者と住所が異なる方は、配偶者の所得に関わらず本人の前年所得が一定以下であれば保険料の全額、または一部が免除になります。

所得に関する計算式は、以下のようになっています。

免除に該当する所得の計算式
全額免除(扶養親族等の数+1)× 35万円+22万円
4分の3免除78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
半額免除118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等
4分の1免除158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等

※ 本人のほか、父母などの第三者が所得審査の対象となることもあります。

特例免除を受ける際は、まずはお近くの年金事務所に相談するようにしてください。申請も年金事務所で行うことができます。
全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

国民年金の猶予について

ここからは国民年金保険料の「猶予」について解説していきます。

猶予は学生が受けられる「学生納付特例」と、50歳未満の低所得者を対象とした「納付猶予制度」があります。

猶予は本人または配偶者の所得で判断されるため、世帯全体の所得で判断されてしまう免除と比べるとハードルが低いのが特徴です。

ただし、受給資格期間への算入はされますが、年金額へは反映されないため、お金がある時に追納をしないと65歳からの老齢基礎年金が少なくなってしまいます。

未納・滞納をするくらいなら猶予申請をしておきましょう

年金額に反映されないなら、そもそも猶予申請をしなくてもいいのでは?と考える方もいるかと思います。ですが、それはお勧めできません。

国民年金は未納・滞納があるとその期間は年金額に反映されないのはもちろん、受給資格期間にもカウントされません。もしも65歳時点で受給資格期間(平成29年8月からは10年間)を満たしていない場合は老齢基礎年金を1円も貰えないのです。

これは猶予にすることで受給資格期間はカウントされるようになります。

また、未納・滞納があると障害基礎年金・遺族基礎年金ももらうことができませんので、万が一の自体に備えることができませんが、猶予にしておくことでこの2つも問題なく受給できるようになります。

以上のことから、未納・滞納をしておくくらいなら猶予(または免除)の申請をしておいた方が良いでしょう。

ではでは、ここからは納付猶予制度と学生納付特例について解説していきます。

納付猶予制度

国民年金保険料の納付を先延ばしにしてくれる制度です。平成28年6月までは30歳未満という制限がありましたが、平成28年7月からは50歳未満の方まで受けることができるようになりました。

猶予された期間は受給資格期間へは算入されますが、年金額へは反映されません。そのため、猶予された保険料はお金がある時に追納しておくのがベストとなります(過去10年までしか追納できませんので注意!)

所得の基準

納付猶予制度の条件は以下のようになっています。計算式は全額免除と同じになっていますが、こちらは「本人・配偶者の所得」となっているため、全額免除よりもハードルは低くなっています。

前年所得が以下の計算式で計算した金額の範囲内であること
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円

※ 本人・配偶者 各々の所得

上の公式だと分かりにくいので、世帯別の所得金額を表にまとめておきます。この表の金額より少ない所得の場合に納付猶予制度は適用されます。

納付猶予制度
4人世帯
(夫婦・子供2人)
162万円
(257万円)
2人世帯
(夫婦のみ)
92万円
(157万円)
単身世帯57万円
(122万円)

※ ()内は収入ベースでの金額です

申請方法

基本的には、住民登録をしている市(区)役所・町村役場の国民年金担当窓口へ申請書を提出するようにしてください。申請書は窓口に備え付けてあります。

申請の際、国民年金手帳(または基礎年金番号通知書)は必ず必要となりますので、忘れずに持っていきましょう。また、場合によっては前年の所得を証明する書類なども必要になりますので、関係がありそうな書類は持って行った方がいでしょう。

それと、基本的に免除申請は毎年するものですので、忘れずに申請するようにしましょう。

学生納付特例

学生の人が受けられる猶予制度です。保険料の支払いを先延ばしにすることができます。

20歳から国民年金の被保険者となりますが、学生時代はお金がない方が多いため、本人の所得が一定以下であれば受けることができます。

他の猶予や免除と違い、本人の所得のみ対象となっているのが特徴です。そのため、最もハードルが低い制度となっています。

猶予された期間は受給資格期間へ算入されますが、年金額へは反映されません。そのため、猶予された保険料は社会人になった後、お金に余裕が出てきたら追納しておくのがベストとなります。

所得の基準

学生納付特例の条件は以下のようになっています。こちらは「本人のみの所得」となっているため、適用のハードルは最も低くなっています。

本年度の所得基準(申請者本人のみ)
118万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等

簡単に言うと、年間の収入が194万円程度であれば条件を満たすことになります。高額バイトに精を出し過ぎると条件を満たすことができなくなる可能性があるので、注意してください・・。

申請方法

在学する大学等の窓口で申請することができます。学校以外で申し込む場合はお近くの年金事務所へ相談に行ってください。

必要なものは「国民年金手帳」と「学生であることを証明する書類(学生証の写しなど)」です。また、申請は毎年行う必要があるので、忘れないように注意しましょう。

この記事を書いた人

taka
taka
当サイト「takaの保険節約術」運営者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者。骨折&手術で身をもって保険の大切さを知って以降、独学で身に付けた保険の知識を紹介するようになりました。FPから紹介された保険の見直しもやってます。保険だけでなく安定度の高い資産運用方法を常に模索しています。ラーメン、焼肉、ラケットスポーツ好き。

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